法務・コンプライアンス

AI電話の法的論点まとめ — AIと名乗るべきか・通話録音の同意・個人情報の扱い

AIRI編集部

·10分で読めます

電話をAIが受ける——技術的にはすでに実用段階ですが、「法律的に問題ないのか?」 という不安から導入をためらう企業は少なくありません。AIと名乗る必要はあるのか、 通話を録音してよいのか、文字起こしデータの扱いはどうすべきか。 この記事では、AI電話の導入前に押さえておきたい法的論点を、現時点での一般的な整理としてまとめます。

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。 個別の判断は弁護士等の専門家にご相談ください。

論点1: AIであることを名乗るべきか

まず多くの方が気にするのが「AIが人のふりをして電話に出てよいのか」です。 現時点の日本の法律には、電話応対でAIであることを名乗る一般的な義務を 定めた規定は見当たらないとされています。つまり「名乗らなければ直ちに違法」 という状況ではない、というのが一般的な整理です。

ただし、義務がないことと「名乗らなくてよい」ことは別問題です。 相手が人間だと誤認したまま会話が進むと、後から分かったときの不信感は 大きくなります。誤認を避ける観点からも、顧客との信頼関係の観点からも、冒頭で「AIによる自動応答」であることを自主的に告知する運用が 望ましいと考えられます。実務上も、多くのAI電話サービスがこの方式を 採用しています。

なお海外では、米国の一部の州やEUのAI規制(AI Act)などで、 AIとの対話であることの告知を求める動きがあると報じられています。 海外の顧客と接点がある事業や、今後の国内制度の方向性を考えるうえでも、 「告知するのが標準」と捉えておくのが安全側の運用といえます。

論点2: 通話録音と同意

AI電話は仕組み上、通話の録音・文字起こしを伴います。日本では、通話の当事者の一方(受ける側)が自分の通話を録音すること自体は、 直ちに違法とはされないというのが一般的な整理です。企業のコールセンターが 「品質向上のため録音しています」というガイダンスを流して録音する実務も、 広く定着しています。

ただし、録音した内容が個人情報に当たる場合は、個人情報保護法上の 義務——利用目的をできる限り特定し、通知または公表すること等——が かかってきます。実務上は次の2点をセットにするのが標準的です。

  • 録音ガイダンス — 通話冒頭に「この通話は録音されます」と 案内する。法的義務の有無にかかわらず、トラブル予防と透明性の観点で 広く行われている実務慣行です。
  • プライバシーポリシーへの明記 — 通話の録音・文字起こしを 行うこと、その利用目的(応対品質の向上、問い合わせ対応の記録など)を 公表しておく。

論点3: 個人情報保護法との関係

通話内容・文字起こしデータには、氏名・連絡先・問い合わせ内容など 個人情報が含まれ得ます。AI電話の導入にあたって整理しておきたいのは 次の3点です。

  1. 取得と利用目的 — 通話データを何のために取得・利用するのか (応対記録、品質改善、FAQ整備など)を特定し、通知・公表する。 取得時に想定していなかった目的で使いたくなったら、目的の変更手続きが 必要になり得ます。
  2. 外部AI基盤への提供は「委託」か — AI電話サービスの多くは、 音声認識や応答生成に外部のクラウドAI基盤を使います。個人データの取り扱いを 事業者に任せる形は、一般に第三者提供ではなく「委託」として整理できる 場合が多いとされていますが、委託に当たる場合でも委託先の監督義務は 残ります。サービス選定時に、データの取り扱い・学習利用の有無・保存場所を 確認しておくべきポイントです。
  3. 保存期間 — 録音・文字起こしをいつまで保持するかの方針を 決めておく。「必要な期間だけ保持し、不要になったら消去する」のが 基本的な考え方であり、保持期間を社内規程やポリシーに落としておくと 運用がぶれません。

論点4: 電気通信事業法などの周辺法令

電話に関わるサービスには、電気通信事業法をはじめとする通信関連の 規制が関係する場合があります。ただし、これらの適用の有無や届出の要否は「自社で回線サービスを提供するのか、事業者のサービスを利用するだけか」 といった事業形態によって変わるため、一般論で断定できる領域では ありません。通常の企業が電話代行・AI電話サービスの利用者として導入する ケースと、自ら通信サービスを構築・提供するケースでは前提が異なる、 という点だけ押さえておけば、導入検討段階としては十分です。

導入前の実務チェックリスト

ここまでの論点を、導入前に確認する実務項目に落とすと次のとおりです。

  • プライバシーポリシー — 通話の録音・文字起こしと その利用目的、外部サービスの利用について明記されているか
  • 録音ガイダンス — 通話冒頭にAIによる応答であることと 録音の案内を流す設定になっているか
  • 保持期間 — 録音・文字起こしデータの保存期間と 消去のルールを決めているか
  • 社内規程 — 通話データへのアクセス権限、二次利用の範囲、 問い合わせがあった場合の開示対応を定めているか
  • サービス事業者の確認 — 利用規約・プライバシーポリシーが 公開されており、データの取り扱いが確認できるか

最後の項目は、サービス選定の実務的な目安になります。当社のAI電話サービス 「AIRI」も利用規約プライバシーポリシーを公開しており、 データの取り扱いを事前に確認したうえで導入を検討いただけます。 そのほか導入前によくいただく質問はFAQに まとめています。

まとめ

AI電話を巡る法的な整理はまだ発展途上ですが、現時点でも 「AIであることを自主的に告知し、録音を案内し、個人情報の利用目的と 保持期間をポリシーに明記する」という基本を押さえれば、 一般的な導入で大きく迷う場面は多くありません。むしろ全通話が記録に残ることは、 「言った・言わない」を防ぐガバナンス上の利点でもあります。 AI電話代行の仕組みそのものは AI電話代行とは?、 カスハラ対策の文脈での録音・記録の価値は カスハラ対策としてのAI一次対応 でも解説しています。

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